フィッティングと感性
フィッティングでお越しいただいたお客様がリピート。フィッティング時にあわせたシューズが、なんと経年劣化でソールからはがれてしまったのだ。
フィッティング翌日、お客様からこんなメールが。
昨日はありがとうございました。
家帰ってびっくりした事が。
前にセッティングしてもらった靴と比べると左右差も同じ量前後してますし、踵からの位置もほぼピッタリ!
フィッティングの精度が凄いですね
これ、私の精度ではない。お客様の身体の声の精度が高いのだ。
flascoでフィッティングを受けたことがある方はよくご存じだが、私は何度も「身体の声を聞いてください」と言う。それは、私が感性工学を取り入れたフィッティングをしているからである。私はスポーツ科学の分野で博士号をいただいたが、博士号取得後は豊田中央研究所出身の井口教授に師事し、感性工学を専門領域にしてきた。そのあたりは、シマノさんとの共同研究で学会発表もされている。(わかりやすくしたまとめは、シマノさんの季刊誌「サイクリングッド」11号でも見られます)
しかし、私がどれだけ専門的に身体寸法やクリート位置の計測をしても、ご自身の「やや前」「きもち左」のような、微妙な感覚の精度には絶対に勝てない。そして「踏みやすい」「回しやすくなった」のような感性評価こそ、数値では表現できない精度を持っている。
お客様の感性と私の専門性が融合したとき、最高のフィッティングが実現する。その場合はむしろ「無感」なケースが多い。私が考える最高にフィットした状態とは「そういえば、今日は膝が痛くならなかったな」とか、「今日はいつもより楽に走れたな」のような、フィッティングの存在をわすれてしまう状態。
そして「気持ちよく走れた」のように感性に響く何かがあったとしたら、望外の幸せである。
これからも、感性工学的アプローチのフィッティングは続く。