多様なトレーニングこそ必要
先週末のMTBワールドカップでは、Tom Pidcockが大暴れ。
ご存知の通り、Tomはロード選手。でも、もともとの背景はシクロクロス。同じような背景を持つ、Mathieu van der PoelやWout van Aert、Peter Saganもロードで大活躍中なのはご存知の通り。
彼らは自転車競技の中でのクロスオーバーを実現している。先駆者としてはRobbie McEwenだろうか。彼はもともとBMXのオーストラリアチャンピオン。同じオーストラリアのCadel Evansは、MTBからロードに転向して活躍。Chris HoyはBMXからトラックに転向して、金メダルを6つも獲得。
このように同じ競技で種目を変更した人もいれば、まったく違う種目から来て活躍する選手もいる。近年ではPrimož Roglič(スキージャンプ)や、Remco Evenepoel(サッカー)、日本では中根英登(サッカー)など。
これは自転車競技だけではない。
先日、トライアスリートのBeth Potterが、ケニアの Beatrice Chepkoechが持っていた5kの世界記録を更新した。陸上のように余計なものを削ぎ落して0.1秒を争う競技の選手が、上半身が必要な競技種目の選手に記録を更新されたのは衝撃。世界で戦うには、もはや単一競技だけをやっていてはトップになれない時代に変遷しつつある気がする。
私はflascoでレッスンを受ける方々に対し「自転車選手である前に、スポーツ選手ですからね!」と言い続けている。これは特にジュニア期の選手に言える。
小さいころから自転車競技の、それも単一種目ばかりやっていると、良くも悪くも効率的になってそれ以外の能力が鍛えられない。特にロードやトラックはペダルに拘束された運動様式なので、ますます専門性が高くなる。
専門性が高くなることは決して悪いことではないが、そのような選手が伸び悩んだりした際、解決するための引き出しの数が少ないことが問題。一方で他のスポーツをやっていた人は、自転車ではない別の引き出しを持っている。この差は大きい。なので、練習は多様性を持たせるべきだし、特にジュニア期はありとあらゆるスポーツをやったほうが良い。
スポーツだけが選択肢とは限らない
私見だが、ただ「体験させる」では足りない。他人から見て「かなり上手だ」レベルまではやっておく必要がある。そのレベルまでやらないと、どうやったら自分の体が思い通りに動くかを知覚できない。このあたりは、武井壮さんがたいへん詳しく・わかりやすく説明されているので、これを観られたし。
いつか武井壮さんと話をしてみたい。