旅は道連れ、世は情け
事務所の電話が鳴る。
どうやらパンクしたらしい。慌てているのか、まくしたてるように状況を説明される。
状況を聞くと、旅の途中のようだ。釘かネジが刺さってしまい、タイヤもダメージを受けてしまった。さすがに、タイヤの予備は持っていないので焦っているようだ。
現在地を聞くと、事務所から25㎞は離れている。
「なんとかたどり着きますから!
と残して電話が切れる。
とにかく、せっかちだ。それほど切羽詰まった状況なのだろう。
1時間ぐらいして、「先ほど電話したものです」と玄関が開く。若い2人組が大きなタクシーに自転車を載せてやってきた。
聞けば、京都の大学1年生。春休みに紀伊半島一周をしている最中。
タイヤには大したダメージもなく、チューブ交換だけで大丈夫。よかったね。
「タクシー代もかなり使っただろう。君たちから修理代はもらわないかわりに、もし旅の途中で困っている人がいたら、助けてあげて。誰かにpay forwardすることが、俺への報酬ね。
あ、あと記事にしていい?っていうのも報酬としてもらってもいい? 笑」
ふと、大学1年の夏を思い出した。北海道一周旅行中に自転車の荷台が折れて、通りがかりの鉄工所で溶接してもらった。その時、鉄工所のおっちゃんは修理代を取らなかった。
30年かかって、やっとpay forwardできたのかな。