パワートレーニングの指標
最近はパワートレーニングに関するプライベートレッスンの依頼が増えてきた。パワーメーターが普及してきた現れだろう。
パワーメーターはサイクリング中のパワーを見える化してくれるので、とても便利。トレーニングの負荷を設定できるし、出力が上がるとモチベーションにもつながる。
ただし、パワーメーターを効率よいトレーニングに役立てるには、いくつかコツがある。その中でも一番重要なのが、適切な負荷を設定すること。実は、これが一番難しい。どういうことか。自分の有酸素能力を知るためにはVO2maxやらFTPやら様々な指標がある。重要なのは、この数値指標そのものではなく、それを測定するためのテスト方法。
たとえばVO2maxのようなテストで「300Wで3分維持」という内容があったとしよう。エアロバイクのように機械的かつ無慈悲に負荷がかかる機械なら、ほぼ適切に負荷をかけられる。一方で「パワーメーターの数字を見ながら、自分の努力で300W を3分間出し続ける」場合、自分の限界に近づくほど適切な負荷をかけられていないケースが多い。
こんなシーンを想像してみて欲しい。
今日は、仲間が集まって有酸素能力のテストをやることにした。
徐々に負荷が上がり、次は300Wを3分間耐えるステージだ。
Aさんはいよいよ限界なのか、下を向いて必死に耐えている。
「頑張れ!」「ここからだ!」
先にドロップアウトした仲間たちが、激を飛ばす。
残り時間を確認しようと仲間がAさんのパワーメーターを見たら、実際に出ている(出せている)のは280Wだった...
なんだ、20Wの差じゃないか、と侮ることなかれ。このグラフを見て欲しい。数年前の私のデータだが、恥を忍んで曝す。
最後のステージで正しく300Wの負荷をかけられた場合、閾値相当の負荷は241W。
もしこれが、先ほどのシーンと同じく最後のステージで280Wしか出せなかったとしたら、どうなるか。
251Wになってしまうのだ。300W出せない身体に、10W強い負荷を強いる。明らかな負荷設定エラー。
もちろん、パワーメーターを見ながら設定された負荷を完遂できる人もいるだろう。ただ、研究職時代から長らく見てきて、そういう方は極めて稀有。
結論。
「テストは能動的な負荷よりも、受動的な負荷で実施すべし」